どうもベイファンのねたほです。
ついに2017年のセ・パ交流戦が5月30から開幕しますが、セリーグは阪神の活躍以外はある程度去年の順位に近い動きをしていて、ベイファンとしては少しもどかしいところ。
パリーグは西武から移籍した岸投手の活躍などで躍進するなど、かなり波乱含みの展開となっていますが、今後どうなっていくのでしょうか。
毎年この時期なると行われるセ・パ交流戦ですが、どのチームも6チーム×3試合の合計18試合が組まれ、特にセリーグは上位から下位までのゲーム差があまりないので、交流戦の結果次第ではかなりの順位変動がある事でしょう。
交流戦といえば気になるのが「DH制」
パリーグはピッチャーが打席に入らないDH制を採用していますが、セリーグはピッチャーも「9人目の野手」として打撃に参加します。
とはいえ、投げるのが本職のピッチャーはあまり打撃練習をすることがないので、試合では「安パイ」として見られがち。
どのチームも「ピッチャーは9番打者」として打順を組むのがセオリーとなっていますが、ラミレス監督率いる横浜DeNAベイスターズはここ最近「8番ピッチャー」の打順で試合に挑んでいます。
この打順は「どんな目的があるのか」、そして「どんな結果に結びついているのか」を検証してみましたのでご覧ください。
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8番ピッチャーという打順 きっかけはウィーランド
DeNAが8番ピッチャーという打順を初めて実践したのは4月14日のヤクルト戦でした。
この日の先発は新加入のジョー・ウィーランド投手です。
2008年にレンジャーズから4巡目で指名を受け、その後パドレス・ドジャース・マリナーズ・ブレーブスと渡り歩いて、今季から加入しました。
ウィーランド投手は高校時代「3番ショート」で通算30本塁打の活躍をするなど打撃も得意としており、試合前の打撃練習ではクセのないキレイなフォームでヒット性の当たりを連発していました。
そこでラミレス監督は「8番ウィーランド・9番倉本」という打順を組み、見事勝利を収めました。
その試合を振り返ってみるとラミレス監督がなぜ「8番ピッチャー」という打順を組み始めたのかが分かります。
打順の繋がりやすさと切れやすさ
4月14日の試合は横浜が勝利したものの、結果は「10回サヨナラ勝ち」でした。
となると「8番ウィーランド」の意味があまりないように感じますが、重要なのはこの日「イニング別に何番から始まったか」です。
これは当日のイニング別打撃成績ですが、注目すべきは「3回・5回・9回」です。
3回と5回は「9番倉本」から始まり、3回に至っては倉本が出塁し「ノーアウトで上位打線」に回ってきています。
また、9回に関しては8番から始まり「ここぞという時に代打からスタートできた」のが、この打順の成果でもあるといえます。
いずれのイニングも得点こそしていませんが、それは結果であって、大事なのは「少ないアウトカウントで得点力のある打順へ回すこと」ですから、ラミレス監督の作戦はある意味成功だと言えます。
9番から始まっても1番から始まってもOK
打順は1~9番で組まれますが、「打線」というくらいですから点ではなく線で考える必要があります。
9番の次は1番になるわけで、9番打者にピッチャーを配置すると高確率でアウトなので、もし9番で3アウトにならなければ、せっかくの上位打線を活かし切ることはできないでしょう。
また、これはベイスターズだからこその考え方となりますが、もし「9番倉本」を「1番倉本」として考えた場合、
1番倉本・2番桑原・3番梶谷・4番ロペス
という普通にありそうな「上位打線」になります。
ですからベイスターズの場合「9番から始まっても1番から始まってもOK」というダブルスタンダードな打順を組むことができたわけです。
とはいえ本当に8番ピッチャーはアリなのか
いままで「8番ピッチャー」についてのメリットを書いてきましたが、問題は「それで結果はどうなのか」ということです。
そこでふたつの結果を基に考えていくことにします。
スタート打順別得点
まず基礎となる部分として、「スタート打順別の得点力」を算出してみました。
計算方法は単純で、「①イニング毎に何番打者から始まったか」と「②そのイニングで何点入ったか」を調べます(これがかなり大変でした汗)。
②を①で割ることによって、打順別の得点力を算出することができます。
以下は2017年開幕から5月24日までの結果です(ベイスターズのみ)。
スタート打順 | 回数 | 得点 | 得点力 |
1番 | 78 | 49 | 0.63 |
2番 | 33 | 22 | 0.67 |
3番 | 42 | 10 | 0.24 |
4番 | 41 | 19 | 0.46 |
5番 | 32 | 4 | 0.13 |
6番 | 47 | 16 | 0.34 |
7番 | 38 | 9 | 0.24 |
8番 | 45 | 17 | 0.38 |
9番 | 46 | 9 | 0.20 |
試合は必ず1番から始まりますので、他の打順より2倍程度多くなります。
ちょっと面白いのが5番からの打順で全然点が入っていませんね。分母が少ないというのも原因の一つでしょうが気になる結果です。
なお、上記データは今シーズン(5月24日まで)の全試合成績ですので、今度は「8番投手」で組んだ計18試合について見てみます。
スタート打順 | 回数 | 得点 | 得点力 |
1番 | 35 | 26 | 0.74 |
2番 | 16 | 13 | 0.81 |
3番 | 11 | 1 | 0.09 |
4番 | 16 | 4 | 0.25 |
5番 | 15 | 0 | 0.00 |
6番 | 17 | 8 | 0.47 |
7番 | 19 | 4 | 0.21 |
8番 | 18 | 7 | 0.39 |
9番 | 17 | 1 | 0.06 |
なんと、「9番スタートの打順で1点しか入っていない」という事実が発覚しました!
これは一体どういうことでしょうか?
8番ピッチャーにしてからの成績
まずひとつ目に考えられるのが「9番打者の成績」です。
対象18試合の9番打者(倉本選手)の成績は66打数19安打(1死球)で打率0.288でした。
倉本選手の現在打率は0.237ですので、むしろ9番打者としての方が成績が良くなっています。
次に考えられるのは後続の「1番打者の成績」です。
同じく対象18試合に全出場している桑原選手を見ると打率0.215の9四死球(現在打率0.213で21四死球)で、あまり成績に差がないことから「9番と1番打者のせい」とは言い切れません。
原因は併殺打と盗塁死
そこで対象18試合で、8番または9番からの打順(合計35イニング)で何回併殺に倒れたのかを調べると合計5回ありました。
ここまでの全試合で併殺打回数は29回/402イニングですから、確率的には約7%です。
ところが「8番投手」で臨んだ試合では14%強の併殺打が生まれてしまい、絶好のチャンスを潰す形となってしまっています。
また、あまりに細かいところなので調べることができませんでしたが、1番桑原選手の盗塁死(今季5回)も関連しているかもしれませんね。
ベイスターズの8番ピッチャーについてのまとめ
とまあ、長々と書いてしまいましたが、ラミレス監督の「8番ピッチャー」という打順は、個人的に「アリ」だと判断しています。
前述した「9番からでもビッグイニングチャンスがある」ということの他にも、併殺などのある意味戦略的なミスを少なくすれば色んなメリットが生まれてくると思います。
ただ「打線の組み替え」は必要になるのではないかなと感じます。
9番を桑原とし、1番梶谷・2番倉本(逆もあり)といった組み替えをすることによって、さらにベイスターズ打線の繋がりができてくるような感じがします。
以上、「ベイスターズの8番ピッチャー」についての考察でした。