「日銀の爆買いが止まらない」
2013年4月から始まった量的金融緩和がここにきて加速しています。
ブルームバーグの集計によると8月初旬の段階で、日経平均225組み入れ銘柄のうちなんと75%の銘柄で大株主の上位10以内に入っているそうです。
さらには楽器・音響のヤマハは既に筆頭株主となっており、株式市場の本来の姿である「競争原理主義」から逸脱し始めています。
加速する日銀の爆買い
すでに株式市場に大きな影響力を持っている日銀ですが、ETF(上場投資信託)の買い入れ枠を2倍に増やしたことにより、このままのペースが進むと2017年末には日経225銘柄の約4分の1にあたる55銘柄で筆頭株主になる見通しです。
日本株ETF市場の日銀が保有する割合は60%にも達しており、金額にして8兆9千億円にも達します。
そしてさらに買い進める方針ですから、いかに日本の株式市場が虚像であるかが分かりますね。
日本の企業が国営化に?
日本では今まで「競争原理」の導入の観点から様々な国営企業を民営化してきました。
電電公社がNTT、国鉄がJR、専売公社がJT、日本郵政公社が日本郵政グループへと民営化を果たし、「官から民へ」の波が続いていました。
企業に勤めるのは人ですから、国営だと「どうせ稼がなくても国が給料を払ってくれる」という意識が働いてしまい、またライバル企業も出てこないため株式市場の本来の姿である「競争原理」が働かなくなってしまいます。
しかし最近の日本市場では日銀の爆買いによるETFの占有、公的年金が株式保有率を上げるなど確実に「国による支配」が拡がってきています。
確かに株の買い支えはありがたいけど…
株価が下落するたびに数千億円もの資金で買い増しをしてくれるのは短期的には良いかもしれません。
下落基調となったときに思ったより下がらなければ我々投資家は助かりますし安心します。
でも株式市場というのはそもそも「企業が株式を発行」して「その企業が儲かるだろうから投資する」わけで、その結果増益となったら株式の持ち分に応じて利益配当を頂戴するのが本来です。
しかし、日銀の買い増しによる株価上昇は「企業の増益」によるものではなく「ガラスの仮面」であることが諸外国にも周知されればどうなってしまうんでしょうか?
また量的緩和が終了したとき、日本の株式市場はどうなってしまうのでしょうか?
いまの日本経済はバブル状態?
1989年に39,000円をつけた日経平均がおよそ9ヶ月の間に半値の20,000円まで下げ、その後「空白の20年」とも言われる苦汁をなめ続けた日本経済。
いわゆる「バブル崩壊」です。
その「バブル」が弾けたのは土地神話があったからです。
土地はいつまでも上昇するという、今考えれば完全に冷静さを失っているのが良く分かりますが、当時は熱狂に包まれていて気づかなかったんですね。
バブルといえば17世紀にオランダで起きた「チューリップバブル」が有名ですね。
そこに珍しいチューリップの球根が活発に取引され、45ドルで買った球根は一時8000ドルにも値上がりしたもんだから、こぞってみんながチューリップを買い求めました。
もちろん冷静になれば分かりますが所詮チューリップです。そのうちその価格に正当性がないことを気付き始めます。
その頃、チューリップに全く興味のない一般投資家が「チューリップを買って転売すれば儲かる」という噂を聞きつけチューリップ市場に参入し始めます。
ですが転売なので、買った価格より高く売らなければ利益は出ません。
そのうち価格は頂点に達し、冷静さを取り戻した人々はチューリップを買わなくなり一気にチューリップバブルは弾け飛びます。
日本で起きた「土地バブル」とオランダの「チューリップバブル」はある共通点があります。
それは「実態とは違う価格」で取引されていたことです。
日本市場に神の見えざる手が登場か?
義務教育で勉強したと思いますが、経済の原理原則としてアダム・スミスが国富論で発表した「神の見えざる手」というものがあります。
解釈は色々ありますが「需給バランスは自然に調整されるため、政府が介入する必要はない」ということだとボクは解釈しています。
どんなに実体とかい離した価格をつけようとも、市場原理が働きいずれは適正価格に落ち着くわけで、それを政府が介入したとしても、神の見えざる手によって調整されてしまう訳ですね。
日銀による日本株の買い増しは「神の見えざる手」に挑戦していると捉えることもできます。
ですが、実体のない株価はいずれ是正されるんじゃないでしょうか?
安倍政権になってからの政府は「マーケットをうまく操っている」印象が凄く強いです。
もちろん否定するわけではないですが、大きな政府は時に大きな弊害を引き起こしますので、量的緩和をうまくソフトランディングして小さな政府として本来の役割に戻ってほしいものです。