FXは1割の勝者と9割の負け組で成り立っていると言われますが、あながち間違ってはいないでしょう。
なぜならFXにはビギナーズラックといった要素が少なく、何も気にせずトレードしていれば確率的に負けてしまうトレードだからです。
今回は「FX初心者が負けるべくして負ける理由」と、どうすれば少しでも勝ち組に近づくことができるのかについて解説をしていきます。
初心者が負ける本当の理由
FXで負ける理由として良く言われるのが「メンタルの弱さ」です。
もっともらしい理由で確かにそういった側面はあるのですが、実はそういったことだけではなく、初心者は単純に不利なトレードを気付かずにしてしまっているのです。
上がるか下がるかは50%
「FXなんて上がるか下がるか50%じゃん」という意見を良く聞きます。そしてそれはほぼ正解です。
チャートとにらめっこしていると気付きますが、上昇スピードよりも下降スピードのほうが速くなることが多く「下がるときの方が多いんじゃない?」という意見もありますが、過去数十年のデータを見れば一目瞭然で「上がるか下がるかはほぼ50%」です(もちろん為替の組み合わせにもよりますが)。
設定したラインに届くかは50%じゃない
ではなぜ、初心者の多くがFXで負けてしまうのでしょうか。これは単純に「勝つか負けるかは50%じゃない」からです。
その時の地合いにもよりますが、しょせん上がるか下がるかは大局的に見れば50%です。しかし、そこに大きな罠が隠されています。
それは「スプレッド」という隠れた手数料です。
一番狭いスプレッドではドル円の0.003円ですが、これはドル円価格100円で購入した瞬間に「99.997円」になることを意味しています。
リスクリワードレシオを1:1にして決済幅を50pis(0.5円)と仮に設定すると、
- 100.50円まで:0.503円
- 99.50円まで:0.497円
なので、この時点で勝つか負けるかは50%ではありません(勝率49.7%)。
さらに決済(損切り)ラインを10pipsにすると勝率はもっと悪くなります。
- 100.10円まで:0.103円
- 99.90円まで:0.097円
となり、勝率は48.5%となります。
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スプレッド拡大という恐怖
FX初心者が負けるもうひとつの大きな理由として「スプレッドの拡大」があります。
よくあるのが急激な価格変動時。急騰・急落具合やFX業者にもよりますが、簡単に10pips程度は拡大します。
通常時は0.03pipsだったスプレッドが10pipsも拡大してしまうとどうなるのでしょう?
ギリギリ損切りライン手前で耐えていたポジションは一瞬にして損切りラインに引っかかり、たまたまスプレッドが拡大しているのを気付かずに注文をしたら10pips以上のマイナスからスタートとなってしまいます。
スプレッド原則固定と記載のあるFX業者でも、重要な指標発表の1分前などにはブワーっとスプレッドが開くことは良くあるので、こういったタイミングで小さな幅でトレードしてしまい損失を被るといったケースは後を絶ちません。
バルサラの破産確率
こういったあまりにも不利な状況でトレードしてしまっているので、FX初心者のほとんどは負け組となってしまう訳です。
ちなみに先ほどのような50%を切る勝負を続けていった場合、どのくらいで破産してしまうかを示す「バルサラの破産確率」というものがあります。
縦軸は損益率、横軸は勝率となっています。
仮に100万円の軍資金でFXをスタートしても、損益率(利益÷損失)が100%、勝率が50%だとしても破産する確率は50%です。
損益率が100%でも勝率が40%なら、98.8%の確率で破産してしまうという恐ろしい結果が待っています。
FX初心者が負ける加速装置
FX初心者の方を煽るわけではありませんが、さらに負けを加速させる罠がそこら中に仕掛けられています。
代表的なのが以下。
大口投資家が狙っている
初心者に多くありがちなのが「ダブルゼロ(00)」など区切りの良い位置を損切りに設定していることです(100.00円とかですね)。
FXの猛者たちはこういった初心者たちを狩るために、あえて区切りの良いラインで仕掛けてくることがあります。しっかりと刈り取ったらすぐに手仕舞いをしてさらに反対売買をしてきます。
また彼らは数百~数千万通貨といった大玉で仕掛けてくるので少なからず相場に影響を与えます。
スキャルピングという甘い誘い
資産の増加スピードを上げるために有効なスキャルピング。皮を剥ぐという意味からも想像できるように、相場のちょっとした動きを狙って数pipsを繰り返し取っていく手法です。
うまくいけば短い期間で雪だるま式に利益が増えていくスキャルピングですが、そう簡単なものではありません。スキャルピングは高難度のテクニックであり、相場慣れしていないと難しいトレード手法です。
さきほどの計算に当てはめてみると、仮に3pipsのスキャルピングを仕掛けた場合は
- 100.03円まで:0.033円
- 99.97円まで:0.027円
となり、勝率は45%まで下がります。
すでに5%もの不利な状態でトレードをする訳ですから、FX初心者にそれを取り返す術はありません。
FX初心者がすべきトレードとは?
このように散々「FX初心者は簡単に負ける」ということを書いてきましたが、これらを全て気にせずにトレードする方法がひとつあります。
それは「長期トレード」です。
さきほどのスプレッド計算による勝率は、あくまでも数pipsから50pipsほどの幅で考えただけです。
もしこれが「勝つも負けるも1000pips(ドル円だと10円)」だったらどうなるでしょうか。
- 110.00円まで:10.003円
- 90.00円まで:9.997円
ですから、勝率は49.985%と限りなく50%になります。
また突如として広がるスプレッド拡大も、長期トレードであればただの誤差範囲です。
大口投資家の初心者狩りやスキャルピングによる不利なトレードともおさらばして、精神的にも安定した投資を続けることができます。
1000pipsと大きな値幅でお話しましたが、これは500pipsでも100pips程度でも良いでしょう。
最近では100通貨単位から取引できるFX業者が増えてきたため、たとえ1000pipsの負けでも1万円の損失に限定することができます(スワップ金利は別)。
FXで大きな利益を上げたいと自分の許容範囲を超えた投資額でマーケットインをするのではなく、まずはFXの特徴を掴むために「長期トレード&小額投資」で始めてみると色々な勉強ができ、そのうちにご自身の投資哲学ができてくることでしょう。